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フードテック

フードテックとは?食糧問題を解決に導く企業とテクノロジーの未来

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近年、SDGsが世界的な課題とされるなか、「食糧問題」に対する世間の意識も高まっています。こうした背景もあり、にわかに関心を集めているのが、「食の技術革新」を通じて社会的な課題に取り組む「フードテック」という分野です。

この記事では、フードテックの概要や、食糧問題との関連をふまえ、企業による取り組みを紹介していきます。

フードテックとは

代替肉

フードテック(FoodTech)とは、食(Food)と技術(Technology)をかけ合わせた造語です。具体的には、食の生産や流通、調理などに関する技術革新を通じて、新たな付加価値を創出したり、食糧問題の解決に寄与したりといった分野を指しています。

フードテックの代表的な例としては、植物由来の原料を用いて作られる「代替肉」が挙げられるでしょう。グローバル化とともに「食へのニーズ」が多様化するなかで、フードテックは多角的な需要に応える技術として期待されているのです。

さらに代替食品以外にも、フードテックに含まれる領域は多岐にわたります。生産工程におけるエネルギーロスの削減や、流通プロセスにおけるフードロスの解消など、技術革新を通じて食糧や環境の問題に取り組む動きも少なくありません。

フードテックが注目される背景

現在フードテックが注目されている背景としては、まず「社会問題に対する世界的な意識の高まり」が挙げられるでしょう。とりわけ、SDGsにおいて掲げられる課題のうちには、食糧と密接に関わる問題が多く見られます。

たとえば食糧生産にともなう自然環境への影響や、フードロスと飢餓の問題、健康問題など、「食」を通じたアプローチが求められている項目は少なくありません。こうした諸問題に対して、「食の技術」という面から改善・解決策を提示する取り組みとして、フードテックは期待されているのです。

さらに、上述したように、グローバル化にともなう食の多様化も、フードテックにスポットが当てられる要因といえるでしょう。現代社会においては、健康志向にもとづく食へのニーズの変化や、宗教的背景に由来する食生活の差異など、さまざまな事情が絡み合う場面が珍しくありません。

こうした動向から、食を提供する事業者は、多様なニーズを抱える消費者に柔軟に対応していくことが求められています。そこで、さまざまな消費者に対して幅広く価値を提供していくための方法的な地盤として、フードテックは需要を高めているのだといえるでしょう。

このような背景をふまえ、現在ではフードテック関連の事業は投資対象としても注目されています。大和アセットマネジメント株式会社の運用する「フード&テクノロジー関連株式ファンド」など、フードテック領域をテーマとしたファンドも登場しており、今後の成長が見込まれる事業分野と考えられているのです。

食糧問題とフードテックの関係性

女性

新たな技術によって人々の食生活を刷新するフードテックは、世界的な食糧問題の改善・解決に寄与するものとしても期待されています。以下では、代表的な食糧問題とフードテックの関連について解説していきます。

「飽食と飢餓」の問題

世界における食糧問題を象徴する言葉として、「飽食と飢餓」が挙げられるでしょう。途上国などにおいて、飢餓問題が解消されない一方で、先進国においては食糧が余り、大量の食品が廃棄されている矛盾を表す言葉です。

まず飢餓の問題について、国連食糧農業機関(FAO)の発表を見ると、2021年において飢餓状態に直面している人口は「約7億人~8.3億人」に上ります。つまり世界の人口のおよそ1割が、十分な栄養を摂取できない状態にあるのです。

(参照:FAO “Hunger and food insecurity”

これに対し、飽食の問題も深刻化しています。国連環境計画(UNEP)の発表によれば、2019年に廃棄された食糧は約9.3億トン。これは世界の食糧生産量の17%にあたり、上述の飢餓状態を補って余りある数字です。

さらに注目すべきは、廃棄量のうち61%が「家庭」から出ているという事実です。ここから、フードロスが各家庭における「食べ残し」や「食材の不使用」に大きく由来していることが窺えるでしょう。

(参照:UNEP “UNEP Food Waste Index Report 2021”(Full report)

これらの事情をふまえると、飽食と飢餓の問題に対処するには、IoT技術などを通じて、生産・流通におけるロスを削減し、適性化していくことが求められます。同時に、家庭における食材のムダをなくしていくための取り組みも、大きな重要性をもつと考えられます。

食糧生産と環境問題

大量の食品を生産・加工するにあたり、「環境への負荷」は避けて通れない問題です。生産・流通プロセスにおける温室効果ガスの排出や、農薬による環境への影響、森林開発による生態系への影響など、食糧生産から消費に至るまでには数多くの環境汚染要因があります。

これについて、国際環境NGOのグリーンピースは、広大な土地で化学物質を用いた食糧生産を行う「工業型畜産」の問題点を指摘しています。そこで危惧されているのは、森林破壊や水質汚染、温室効果ガスの大量排出といった影響です。

同団体はこれらの問題に対し、今後環境負荷を減らしていく取り組みとして、科学技術をベースにした「生態系農業」の重要性を強調しています。

(参照:グリーンピース・ジャパン「ゼロから学ぶ食と環境問題」

生態系農業の具体的な内実はさまざまに考えられますが、その要点は、科学的に環境への影響を評価しつつ、エコロジカルな技術を通じて必要な生産量を確保していくことにあるでしょう。一例として、生産・流通プロセスに用いられる機器の省エネ化や、環境負荷の高い食材を代替食品によって補う取り組みなどが考えられます。

気候変動などにともなう食糧不足

農林水産業において「気候」はきわめて重要なファクターであり、平均気温の上昇や異常気象は、作物の生産量はもちろん、質的な面にも影響を及ぼすと考えられるでしょう。

たとえば環境省が2017年に発表した資料では、将来的な作物収穫量の増減についての研究データがまとめられており、これから時代が進むにつれて大幅に収穫量が減少していく可能性が示唆されています。もちろん影響は穀類にとどまらず、同資料では家畜や果樹への影響についても言及されています。

(参照:環境省「STOP THE 温暖化 2017」(PDF資料)

こうした気候問題に加えて、農林水産業に携わる人口低下も、食糧不足につながる問題として捉えられるでしょう。とりわけ高齢化が進む先進諸国においては、食糧生産に関わる人的なリソースが減少することで、現状の生産量を維持できない可能性が危惧されているのです。

こうした問題に対しては、AIやロボット技術を活用したリソースの削減や、作業プロセスの均質化による労働者の受け入れ体制の整備といった対策が必要になると考えられます。

さらに、これまでの食材だけではなく、「新たな食材」を開発・開拓していくことも食糧不足への対策の1つです。大量生産が可能な代替食品の開発や、「昆虫食」などこれまで消費されてこなかった食材の開拓などが、解決の方途として挙げられます。

日本における食糧問題

これまでに見たさまざまな食糧問題は、日本においても深刻な問題として受け止められています。フードロスの問題についていえば、先のUNEPの資料において、日本の食糧廃棄量は世界で14位。世界でもロスの多い部類に位置づけられています。

その他、農林水産業に関わる人口が減少していることも見過ごせない問題です。高齢化や地方の過疎化にともなう「生産者の後継ぎ問題」は、将来的な食糧供給を考えるうえで大きな懸念事項とされています。

加えて日本では、「食糧自給率の低さ」が積年の課題です。農林水産省によれば、2021年度の食糧自給率はカロリーベースで38%であり、先進諸国と比較して低い水準にあることが指摘されています。

(参照:農林水産省「世界の食料自給率」

これらの事情をふまえると、日本国内においても食糧問題は決して「他人事」とはいえない状況にあります。フードロス問題に対する取り組みはもちろん、農林水産業における生産効率の向上や、生産力の確保が喫緊の課題であり、その解決のために食の技術革新は欠かせないのです。

フードテックに取り組む企業の例

テクノロジー

一口にフードテックといっても、そこには実に幅広い領域が含まれます。食の生産・流通・消費に関わる多種多様な技術が、フードテックの名のもとに発展を遂げているのです。

そのため、事業領域を網羅的に分類することは困難ですが、以下では現在注目度の高い取り組みを事例として紹介していきます。

代替食品関連のフードテック企業

フードテックのなかでも期待度の高い分野として、代替食品の技術が挙げられます。原材料についての多様なニーズに応えることはもちろん、生産プロセスにおいて多くの環境負荷を生じさせる食材を別のもので代用するなど、環境配慮型の取り組みとしても注目されているのです。

日本においても、大塚製薬の「ゼロミート」や、マルコメの「ダイズラボ」など、食材を代用したうえで調味にこだわった製品が展開され、健康志向の強い消費者を中心に受容されています。

また海外においては、牛肉の構成要素を分子レベルで解析し、植物由来の成分からそれを培養する「BEYOND MEAT(ビヨンドミート)」や、空気中の炭素を原料に代替肉を生成する「Air Protein(エアプロテイン)」など、科学的なアプローチによる代替食品も目立っています。

生産プロセスにおけるフードテック企業

農業や漁業などの食材生産過程においては、ロボットによる作業効率の改善や、IoT技術による生産工程の管理を通じ、安全性や品質を均一化する動きが多く見られます。

たとえば株式会社ファームノートは、牧場内で飼育・肥育する牛を一元的に管理するためのアプリを開発。各個体に取り付けられたセンサーの情報をもとに、体調の異常や発情、分娩に関するデータをバックボード上で整理し、管理業務を自動化するプラットフォームを提供しています。

このように、第一次産業の現場にIT技術を導入することは、業界において深刻化する「労働者不足の問題」にも寄与しうるでしょう。必要なリソースを削減することはもちろん、それまで属人化していたノウハウを均質的に管理できるようになり、業界への新規参入のハードルを下げることにもつながると考えられます。

流通プロセスにおけるフードテック企業

流通プロセスにおいても、在庫・発注管理において生じるフードロスや、配送にともなうCO2排出など、改善が求められるポイントは多くあります。そこで現在では、「食品をよい状態のまま、欲しい人のところに届ける」ために、さまざまなフードテック企業が独自の取り組みを行っている状況です。

たとえばデイブレイク株式会社は、「冷凍技術」を通じて流通プロセスの適性化を目指すベンチャー企業です。同社はフードロスを削減するうえで、食材の寿命を延ばす冷凍技術が大きなカギを握ると考えています。

同社が目をつけたのは、「現状の流通体制において、適切に技術が導入・運用されている現場は非常に少ない」というポイントです。こうした状況をふまえ、同社は特殊冷凍機械の販売や、機械の運用コンサルティングを通じて、質の高い冷凍技術による業界の流通プロセス改善に注力しているのです。

調理プロセスにおけるフードテック企業

調理のプロセスに関するフードテックとしては、一般家庭の食生活をサポートするIoT家電の分野が注目されています。たとえば、油を使わず揚げ物を作れるオーブンレンジや、食材と調味料を入れれば料理が完成する鍋など、調理の手間を減らしつつ健康的な食事を提供する製品がその最たるものでしょう。

さらに、IoT家電と食材配達を組み合わせたサブスクリプションモデルも登場しています。たとえばパナソニックのfoodable(フーダブル)は、利用者にキッチン家電を貸し出し、それを活用できる食材を定期的に届けるサービスです。家電の特性を活かして簡単に調理できるメニューを食材とともに提供することで、「毎日メニューを考えて作る」という手間を減らしています。

このほかにも、冷蔵庫内の食材管理や、レシピの提案、食材に応じた調理の簡略化など、現在では多様な機能をもったIoT家電の開発に各社がしのぎを削っています。これらの技術が普及・発展することで、家庭内におけるフードロスや、健康格差といった問題にも改善の兆しが見えてくるかもしれません。

以上のように、フードテックに関連する事業は多種多様であり、それぞれが異なる角度から独自のアプローチを見せています。「食」という人類に普遍的な営みをめぐる技術は、それだけ社会や市場に対する影響も大きく、今後もフードテックの発展が見込まれる状況だといえるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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