最先端のWebマーケティングを発信するメディア

最先端のWebマーケティングを発信するメディア
創業

新創業融資制度とは?自己資金なしで起業は可能?

投稿日:
SHARE
FacebookTwitterLineHatenaShare

新たなビジネスのビジョンを抱き、事業の立ち上げを目指す際、最初のハードルとなるのが資金調達です。とくにゼロから起業する場合、民間の金融機関においては、自己資金や担保などの条件をクリアすることが難しいこともあるでしょう。

そのような状況で有効なのが、日本政策金融公庫による創業支援融資です。なかでも「新創業融資制度」は、保証や担保についての制限がなく、実績のない状態からの起業において強い味方となりえます。

この記事では、新創業融資制度の概要や特徴のほか、その他の創業支援制度を紹介しつつ、申し込みの流れについても解説していきます。

新創業融資制度とは

お金の計算

2014年に日本政策金融公庫によって設立された「新創業融資制度」は、新規事業の立ち上げや、操業に必要となる資金を貸し付ける制度です。無保証・無担保で融資を受けられる点が最大の特徴であり、さまざまな事業のスタートを後押しすることを主旨とします。

そもそも日本政策金融公庫は、財務省下の特殊法人であり、政府系金融機関の1つに数えられます。産業・経済を活性化させるための政策をバックボーンとするがゆえに、民間の金融機関と比べて幅広い融資制度を特徴としており、とくにスタートアップや中小企業などに対する支援が充実しているのです。

なかでも新創業融資制度は、融資の条件が柔軟に設定されていることから、起業資金を工面する際に有力な選択肢とされています。

新創業融資制度の特徴

上述のように、新創業融資制度は原則として「無保証・無担保」での融資に対応しているため、民間の金融機関で融資を受けることが難しい場合にも申し込みやすい制度です。

一方で、限度額は3,000万円と、日本政策金融公庫の他の融資制度に比べて低めに設定されています。また利率は年2.28%~3.25%であり、同公庫においては高めの金利であることにも注意が必要です。

総じて、実績をもたない創業段階の個人でも借りやすい点がメリットですが、その分やや返済条件が厳しい傾向にあるといえます。

(参照:日本政策金融公庫「新創業融資制度」

新創業融資制度の対象者

新創業融資制度の対象としては、新たに事業を始める者、もしくは事業を開始してから税務申告を2期終えていない者と規定されています。

融資を受けるにあたっての条件は、「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」と定められています。審査は書類や面談を通じて行われ、主に判断の対象となるのは事業計画の妥当性です。つまり事業の継続性や、資金繰りの現実性について認められる必要があるでしょう。

また、資金面の条件として、新たに事業を始める場合「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」を有することが必要です。しかしこの条件には例外も多く定められており、自己資本ゼロであっても融資を受けられる余地は広く残されています。

たとえば、6年以上同じ業種に勤め、それと同業種の事業を立ち上げる場合や、技術やノウハウに新規性が認められる場合などは、自己資金についての条件が免除されます。そのほかにも多くの免除規定が用意されていますので、資金面の条件をクリアすることが難しい場合には、該当するものがないかチェックしてみるとよいでしょう。

(参照:日本政策金融公庫「新創業融資制度の『自己資金の要件を満たすものとする要件』」

日本政策金融公庫によるその他の創業支援融資

ファイナンス

日本政策金融公庫は上述の新創業融資制度のほかにも、起業を後押しするさまざまな融資制度を用意しています。実際に利用を検討する際は、創業時の状況を鑑みつつ、自身に合った制度を活用することが重要です。

新規開業資金

新規開業資金は、新規事業を立ち上げる者、あるいは事業開始からおおむね7年以内の者を対象とする融資制度です。限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)であり、起業に要する資金のうち、設備資金および運転資金が融資の対象とされています。

具体的な融資の条件としては、新創業融資制度と同様に「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」と定められており、書類や面談による審査をクリアする必要があります。

新規開業資金の特徴は、条件によって利率の軽減措置が設けられていることです。たとえば「女性」「35歳未満」「55歳以上」のいずれかに該当する場合には「女性、若者/シニア起業家支援関連」の枠で有利な条件が適用されます。

その他、廃業歴がある場合の「再挑戦支援関連」の枠や、中小会計を適用する場合の「中小企業経営力強化関連」の枠など、軽減措置の対象がさまざまに設定されており、該当する場合には返済の負担を減らすことができるでしょう。

なお、無保証・無担保で融資を受けたい場合などは、新創業融資制度との併用も可能です。

(参照:日本政策金融公庫「新規開業資金」

生活衛生新企業育成資金

生活衛生新企業育成資金は、飲食や美容など、生活衛生に関わる事業を立ち上げる者、あるいは該当する事業を始めてからおおむね7年以内の者を対象とした融資制度です。

設備資金への融資として、7,200万円を上限に貸付が行われます。あるいは、地方厚生局による振興計画に認定された組合に加入している場合には、設備資金として1億5,000万円~7億2,000万円、運転資金として5,700万円を上限に融資がなされます。

新規開業資金と同様、新創業融資制度との併用も可能です。さらに、女性や35歳未満、55歳以上など、特定の条件に該当する場合には利率などの軽減措置を受けることができます。

(参照:日本政策金融公庫「生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)<特例貸付>」

生活衛生関連の事業のほかにも、日本政策金融公庫は業種によって異なる融資制度を設けています。立ち上げる事業によっては、より有利な条件で融資を受けられるケースもありうるため、マッチするものがないか確認しておくとよいでしょう。なお、制度を探す際には公式サイトの検索フォームが便利です。

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

挑戦支援資本強化特別貸付は、ベンチャーやスタートアップなどで新事業を立ち上げる者を対象とした融資制度です。すでに「新規開業資金」など、日本政策金融公庫における特定の融資制度の対象となっていることが利用条件とされています。

さらに、地域経済の活性化に関わる事業を扱うことなども条件に含まれており、やや間口を狭めた制度だといえるでしょう。

制度の特徴は、「資本制ローン」とあるように、利用した際の借入金額が他の金融機関における融資審査の際に「負債」として扱われず、「資本」のうちに数えられる点です。融資を受けていることがマイナスの評価にならないため、さらなる融資を検討している場合には大きなメリットとなるでしょう。

また、無担保、無保証で利用できることも特徴です。一方で、事業計画書の提出や、経営状況の報告義務を含む特約を結ぶ必要があるなど、特有の条件も設けられています。

なお、この制度は日本政策金融公庫内の2つの部門から運営されています。事業規模によって申し込める部門は異なり、個人企業や小規模企業であれば「国民生活事業」による融資(限度額7,200万円)、中小企業の場合には「中小企業事業」による融資(限度額10億円)を受けることになります。

(参照:日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」

新創業融資制度に申し込む際の流れ

申し込み

新創業融資制度を利用するには、所定の手続きに従って申し込みを行い、面談などの審査をクリアする必要があります。以下では申し込みに必要な書類や、面談のポイントについて解説していきます。

必要書類を用意する

申し込みにあたり、まず必要なのが「創業計画書」と「身分証明書」です。創業計画書などの書式は、公式サイト上からダウンロードできます。

申し込みはオンライン、または郵送の形式に対応しており、郵送の場合には「借入申込書(国民生活事業用)」の同封が必要です。

また、設備資金への融資を申し込む場合には、当該設備についての「見積書」を用意しましょう。さらに法人の場合は、履歴事項全部証明書または登記簿謄本が必要です。

その他、不動産を担保にする場合は、不動産の登記簿謄本か登記事項証明書などの提出が求められます。なお、必要書類の詳細については、日本政策金融公庫の専用窓口や、各支店で直接問い合わせることができますので、提出前に確認しておくとよいでしょう。

(参照:日本政策金融公庫「創業予定の方」

創業計画書について

上述の書類のうち、創業計画書は、創業の動機や経営者の経歴、事業の概要や見通しなどを記入する書類であり、審査において重要な材料とされます。

日本政策金融公庫のサイト上では、計画書の書き方を動画でわかりやすく解説しているため、作成の際には参考にするとよいでしょう。

(参照:日本政策金融公庫「創業時支援」

また、同サイト上では業種ごとの記入例や、創業時のチェックポイントなどもまとめられています。業種ごとの経営指標なども掲載されているので、じっくりと例を確認しながら正確な情報を記載していきましょう。

(参照:日本政策金融公庫「創業前支援」

面談から融資決定まで

申し込みからおおむね1週間以内に、スケジュール調整のうえ審査担当者との面談が実施されます。

面談で聞かれるポイントとしては、「創業の動機や略歴」「商品・サービスの内容」「ターゲットや店舗などの立地条件」「資金計画の実現性」「収支予測の妥当性」が挙げられます。現実的な資金繰りの方策や、継続的に収益を上げていくための明確なビジョンを示すことが必要になるでしょう。

その後、必要に応じて店舗や事務所など創業予定地への訪問が行われます。

融資決定からの流れ

面談や訪問を終えてから、1週間程度で審査結果が送付されます。審査に通った場合には、同封の契約書に記入のうえ、郵送で返送しましょう。手続き完了後、指定の口座に融資金額が送金されます。

返済は月賦払いであり、毎月決まった期日に指定の口座から自動的に引き落とされます。返済方法としては、元金均等返済や元利均等返済、ステップ(段階)返済などが選択可能です。

なお、申し込みから融資までの目安は3週間から4週間程度とされています。融資までには時間がかかることもありますので、スケジュールには余裕をもっておきましょう。

自己資金なしの起業に適したその他の資金調達方法

資金計画

日本政策金融公庫による融資のほかにも、起業時に可能な資金調達の方法はいくつか考えられます。利用のしやすさや、必要な額、返済時の負担などを鑑みながら、自身に適した選択肢を見つけることが大切です。

政府による補助や助成の活用

業種や事業者の状況にあわせて、政府はさまざまな補助金・助成金を用意しています。これらは返済の義務がないため創業後の経営状況を整えやすく、利用できるものがあれば積極的に申し込みたいところです。

対象となる層の広い補助金としては、ITツールによって業務の効率化を図る事業者を対象とした「IT導入補助金」や、販路開拓に向けた取り組みを支援する「小規模事業者持続化補助金」などが挙げられます。

また、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)以外のエリアで事業を立ち上げる場合には、内閣府の「起業支援金」も対象者が広く設定されているので、検討するとよいでしょう。

なお、政府による補助金や助成金を探す際には経済産業省・中小企業庁による「ミラサポplus」のサイトが便利です。

地方自治体による融資制度を活用

各都道府県などにおいても、起業を支援するための制度が用意されています。

たとえば東京都では、「東京都中小企業制度融資」として、東京信用保証協会の保証対象となる事業者に向けた融資制度があります。東京都以外でも、信用保証協会の保証にもとづく融資制度を用意している都道府県は多くありますので、各地の信用保証協会や労働局で確認してみるとよいでしょう。

その他、都道府県や市区町村が独自に補助金・助成金を交付しているケースもあるため、拠点となる自治体の支援制度をチェックしておきましょう。

クラウドファンディング

新規性の強いサービスや、社会貢献の側面が強い取り組みをはじめ、多くの人から理解や共感を得られる事業を扱う場合はとくに、クラウドファンディングも有効な選択肢です。

自己資金や保証についての制限もなく、CAMPFIREなど専用のプラットフォーム上でプロジェクトを紹介すれば資金を募ることができ、審査が必要な融資に比べて着手しやすい特徴があります。

さらに、資金の提供は必ずしも「融資」のかたちを取らず、貸借関係を前提としないプロジェクトも多くあります。資金提供者への返礼として、商品・サービスなどを用意する形態も一般的になっており、支援者への見返りをさまざまに設定できる点もメリットです。

一方で、集まる金額が事前に見通せない点がデメリットだといえます。資金提供者の「新しいプロジェクトに関わりたい」という気持ちに訴求するための工夫が不可欠でしょう。 なお、クラウドファンディングの概要や実施のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しております。あわせてご参照ください。

どのような方法を選ぶ場合にも、資金調達には「熱意」に加えて「客観的な視点」が必要です。長期的な視野から事業の継続性や収益性を見通し、それを他者にも理解できるかたちに落とし込むことが大切でしょう。

SHARE
FacebookTwitterLineHatenaShare

この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

UPDATE 更新情報

  • ALL
  • ARTICLE
  • MOVIE
  • FEATURE
  • DOCUMENT