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リスキリング

リスキリングとは?何を学ぶべき?リカレント教育との違いも解説

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AIやIoT、ロボットといった技術の発展とともに、「人間が担当する業務」は今後大きく変化していくことが予想されます。激しい変化の時代を生き抜くためには、自身がもつスキルを不断に見直し、アップデートしていくことが必要でしょう。

近年ではとくに、まもなく到来しつつある社会変革を見越した動きとして、働く人々が新たなスキルを身につけるための「リスキリング」や「リカレント教育」といった取り組みが注目されています。

この記事では、リスキリングとリカレント教育、それぞれの意味や違いをふまえ、これから学ぶべき内容について考察していきます。

リスキリングとは

リスキリング

リスキリング(reskilling)とは「あらためてスキルを身につけること」を意味する言葉です。主に企業が新しい事業やプロジェクトを立ち上げる際などに、そこで必要とされるスキルを従業員が学ぶ場を設けることを指しています。

「株式会社リクルート」内のシンクタンクである「リクルートワークス研究所」による定義では、リスキリングは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応して価値を創造し続けるために、必要なスキルを獲得する/させること」とされています。つまり、新たな環境のなか、労働者がスキルを付加・更新することで、固有の価値を生産し続けることが目的の取り組みだといえるでしょう。

(引用:厚生労働省「第22回労働政策審議会労働政策基本部会 資料」PDF資料「資料2 リクルートワークス研究所 大嶋様提出資料」

リスキリングの重要性は政府においても強く認識されており、これを支援する体制が整備されはじめています。たとえば経済産業省は2021年から「デジタル時代の人材政策に関する検討会」を開催し、DX人材育成やデジタルスキルの向上といった観点から、リスキリングの有効な方策や取り入れ方について検証を進めています。

さらに、2023年度からは「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」として、キャリア相談やリスキリング講座の提供、転職支援などを行う補助事業者への支援を展開する構えです。

(参照:経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」

リスキリングが重要視されている背景

近年、ビジネスシーンにおいて「スキルのアップデート」が重要性を増している背景としては、近い将来において「第4次産業革命」と呼ばれる大きな産業構造の変革が生じると予想されていることが挙げられます。

内閣府は第4次産業革命を特徴づける技術として、IoTおよびビッグデータ、さらにはAIを挙げており、これらを通じて飛躍的な生産性の変化やビジネスモデルの革新が生じていくと期待されているのです。

(参照:内閣府「日本経済2016-2017 第2章第1節 第4次産業革命のインパクト」

こうした社会変革を通じて、「人材に求められるスキル」も大きく変わっていくことは想像に難くありません。たとえば世界経済フォーラムが発表した“The Future of Jobs Report 2020”においては、2025年までの段階で、企業において平均40%ほどの労働者がリスキリングを必要とする状況となることが予測されています。

(参照:World Economic Forum “The Future of Jobs Report 2020”

加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を経た現在では、働き方に関して多様な選択肢が視野に入るようになりました。リモート勤務などを引き続き実施する企業が見られるなかで、働き方の「スタンダード」に変化が生じ、従来とは異なるスキルが求められる局面が増えていくことも予想されます。

リスキリングに取り組む企業の例

ビジネスを効率化する技術が日進月歩で発展するなかで、リスキリングによって従業員の知識やスキルの水準をアップデートしようと取り組む企業は少なくありません。

たとえば「株式会社三井住友フィナンシャルグループ」は、2021年からグループ全従業員5万人を対象に「デジタル変革プログラム」を通じたリスキリングを開始しています。2016年から社内に「デジタルユニバーシティ」という専門の教育組織を設立し、従業員が体系立ててDX関連の知識を学べる学習プログラムを開発しました。

(参照:Udemy Business「学びで新たな価値創造へ——SMBCグループが取り組む「お客さま本位」のデジタル人材育成」)

年齢層や教育環境の違いによって生じる従業員間の知識のギャップは、DX対応など新たな局面を迎える際のネックとなる可能性があります。社内でリスキリングを推進することで、そのようなギャップを解消し、新しいステージで闘う体制が整えられるでしょう。

リスキリングの実施方法はさまざまであり、自社リソースで研修や講座を設置するケースのほか、外部講師を招いたり、教育講座を利用したりと、社外リソースを活用する例も多く見られます。

リカレント教育とは

リカレント教育

上述の「リスキリング」と近い領域の言葉として、「リカレント教育」が挙げられます。リカレント教育とは、学校教育を終えたあとの社会人が「主体的な学習の場」をもつことを意味する言葉です。

リカレント(recurrent)は「回帰する」「循環する」といった意味を表す形容詞であり、ここでは「一度教育の場を離れた者が再び学習機会をもち、そこで得た知見をまた労働の場で活かしていく」といったサイクルを指しています。

リカレント教育は1969年に当時のスウェーデン教育相パルメ氏が用いたことで知られ、その後OECDなどによっても推奨されるようになりました。その力点は「教育の平等性」に置かれており、労働などを通じて自身の興味関心をあらためて把握した社会人が、自身の人生やキャリアにとって必要な内容を主体的に学ぶことが目的とされます。

現在では、「時代の変化をふまえたスキルのアップデート」といった観点から、リカレント教育が注目される場面も多く見られます。ただし、もともとリカレント教育は職業能力の向上を目的とした学習に限らず、自身の興味関心を深める学習全般を包含する言葉だといえるでしょう。

リスキリングとリカレント教育の違い

リスキリングとリカレント教育は、「学校教育を終えたあとに学びの機会を得る」という点で共通しています。ただし、リスキリングは「企業が主体」となって進められるケースが多く、とくに「業務に必要なスキルの習得」という面が強いといえるでしょう。

対してリカレント教育は、社会人の「個人的な関心にもとづく学習への取り組み」というニュアンスを多分に含みます。労働者自身がキャリア形成を見越して新たなスキルの習得を目指したり、あるいは特定の趣味関心についての専門性を深めたりと、「個人の主体的な学習活動全般」に焦点をあてた言葉です。

リカレント教育と生涯学習の違い

リカレント教育と生涯学習はきわめて近い言葉だといえます。OECDが1973年に発表した報告書「リカレント教育 -生涯学習のための戦略-(Recurrent Education: A Strategy for Lifelong Learning)」というタイトルからも窺えるように、リカレント教育を「生涯学習の一環」として位置づけることも可能でしょう。

一方で、生涯学習が趣味やレクリエーションなども含めた「豊かな人生の形成」を主眼としているのに対し、リカレント教育はキャリア形成を念頭に置いた言葉であるとも考えられます。とくに近年では、時代の変化に応じたスキル習得に対する関心の高まりから、リスキリングのような「アップデート」の側面が強く意識される傾向にあるといえるでしょう。

リスキリングやリカレント教育で何を学ぶべきか

リスキリングやリカレント教育で何を学ぶべきか

リスキリングを社内で実施する場合には、自社の現状や今後の社会動向、経営方針などを勘案しつつ、「これからの業務においてどのようなスキルが求められるか」を明確に見定めておく必要があります。

また、個人がリカレント教育を実践する場合には、人生設計やキャリア形成について長期的な視野をもちながら、「何をして働きたいか」「どのように働きたいか」というビジョンを定めておきたいところです。

状況によって学ぶべき内容はさまざまですが、以下ではこれからのビジネスシーンにおいて重要性が増すと考えられるスキルについて解説していきます。

データ解析やプログラミング

ビッグデータがさまざまな分野で活用されるなか、膨大なデータから現状を把握し、それにもとづいて判断を下していく能力は、ビジネスにおいて汎用性の高いスキルとなりつつあります。経営やマーケティングに関わる役職以外にも、数字やグラフから「今何が起きているのか」を読み取るスキルを社内に広めることにより、各人の主体的判断が促され、アイデアの共有なども活性化していくと考えられるでしょう。

同時に、「データから何をどのようにアウトプットするか」という観点を養ううえで、プログラミングの基礎知識も有効です。エンジニアでなくとも、AIに適切な指令(プロンプト)を送る際など、今後はプログラミング的な言語感覚が業務効率を左右するケースが数多く生じると予想されます。

データ解析やプログラミングの基本的な知識を学べる資格としては、「独立行政法人 情報処理推進機構」の「基本情報技術者試験」が挙げられます。また、自社で導入しているBIツールなどがある場合には、それに関連した資格を取得することも有効といえるでしょう。

AI関連の知識

対話型のAI「ChatGPT(チャットジーピーティー)」や、画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」など、テキストやコード、画像などを生成できるジェネレーティブAIの発展とともに、これからさまざまな産業において大きな業務フローの転換が生じていくと予想されます。「AIのビジネス活用」が業界を問わずテーマとなりうるなか、組織のメンバーがAIについての知識を学び、共有しておく意義は大きいといえるでしょう。

AIをめぐる状況は日を追うごとに大きく変化しているため、社内に専門のチームを設置し、自社に関する技術の動向をチェックしつつ、活用の方途を検討していくことも有効です。そのうえで、社内で共有すべきノウハウを取りまとめ、研修を行うといった方法がリスキリングの手段として考えられます。

社外でAI全般の基本的な知識を身につける際に有効な資格としては、「一般社団法人 日本ディープラーニング協会」の「G検定」などが挙げられます。

リスキリングに利用できる補助金

リスキリングに利用できる補助金

リスキリングやリカレント教育は政府によって強く推進されており、これらを支援する補助金や制度もさまざまに用意されています。事業主向けの制度のほか、個人のリカレント教育を後押しする制度もあるため、状況に応じて適切な支援を利用していきましょう。

事業主への助成制度

厚生労働省の「人材開発支援助成金」は、従業員に向けて訓練を実施したり、社外の訓練参加のため休暇を与えたりといった措置を講じる企業を対象とした制度です。9つのコースによって構成されており、自社の状況や取り組み内容に応じてコースを選べます。

2022年12月には新たに「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。新規事業やデジタル化などへの対応を目的に、必要となるスキル習得に向けた訓練を行う企業が対象とされています。

(参照:厚生労働省「人材開発支援助成金」

また、東京都は「DXリスキリング助成金」として、DX関連の専門的なスキル習得に向け訓練を実施する中小企業を支援しています。自社に外部講師を招いたり、民間の教育機関が行う訓練に参加したり、あるいはeラーニングを通じた講座を受講したりと、さまざまな形態の訓練が対象に含まれるため、状況に合わせて活用可能です。

(参照:東京しごと財団「DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」

個人向けの支援

個人向けにも、社会人の新たな学びを後押しする制度が用意されています。

厚生労働省の「教育訓練給付制度」は、スキルアップやキャリア形成を目的に、厚生労働大臣指定の訓練を受講し、修了した者を対象とした補助制度です。受講する訓練の種別により助成率は異なり、費用の20%〜70%が給付されます。

指定の訓練は14,000講座にも上り、情報関係や事務関係、社会福祉や各種専門技術など幅広い領域を対象としています。

(参照:厚生労働省「教育訓練給付制度」

また、リカレント教育において学ぶべき内容が見定められない場合には、各地の「キャリア形成・学び直し支援センター」で実施されるキャリアコンサルティングを活用するのも有効です。

限られた時間のなかで有益な学びを得るには、学ぶ側の主体的な関心と意欲が欠かせません。働きながら、あるいは働くことを一時中断して学びの場を設ける際には、「どんなキャリアを送りたいか」「どんな生き方をしていきたいか」といった長期的なビジョンをもち、それに適う知識やスキルを身につけていきたいところです。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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