メタバースとは?その意味と具体的な始め方・やり方・人気アプリを紹介
IT技術の革新を表現する言葉のなかでも、「メタバース」は現在「新しい時代の象徴」として大いに注目されています。
メタバースに含まれるサービスのうちには、すでに身近なアプリなどのかたちで展開されているものもあり、一般的なネットユーザーが手軽に始められるサービスも少なくありません。今後の社会に革新をもたらす可能性を秘めたメタバースですが、新しい環境に早くから馴染んでおくことで、これから訪れる変化にも対応しやすくなるでしょう。
この記事では、メタバースの意味や概要をふまえ、手軽に体験できるアプリや、始め方について初心者にもわかりやすく解説していきます。
目次
メタバースとは
メタバースとは、インターネット上に構築される「3Dの仮想世界」を意味する言葉です。語源としては、「超越」を意味する「meta(メタ)」と、「宇宙」を意味する「universe(ユニバース)」をかけ合わせた造語であり、「現実とは異なる次元に切り拓かれるバーチャルな環境」といったニュアンスを含みます。
典型的なメタバースの例としては、「3Dのバーチャル空間において、自身のアバターを操作して他のプレイヤーと交流したり、行動したりする環境」が挙げられるでしょう。オンラインゲームのほか、バーチャルショッピングモールやビジネス向けの会議ツールなど、現状でもさまざまな場面で導入が進んでいます。
なお、メタバースという言葉そのものは、それほど新しいものではありません。すでに90年代のSF小説などにおいて使用例が見られ、「仮想世界で人間が行動する」という近未来への想像をかき立てる言葉として用いられています。
さらに、ビデオゲームの分野を中心に、メタバースと呼びうる環境は以前から提供されてきました。2003年には、アバターを通じて3D世界での活動を楽しむ「Second Life」がリリースされており、メタバースの先駆けとして位置づけられています。
こうした動向のなか、近年ではVR(Virtual Reality:仮想現実)の技術や、仮想通貨に代表されるブロックチェーンの技術を通じて、仮想世界の「リアリティ」や「システムの完成度」が一段と向上しています。このような背景から、メタバースは新たな時代を象徴する言葉として注目されるようになったのです。
メタバースとVRの関係
メタバースとVRは、意味が似通っている部分も多く、混同されるケースがしばしば見られます。どちらも「現実とは異なる次元のリアルな空間」といったニュアンスを含む言葉ですが、メタバースは主として「ユーザーが利用できる環境やサービス」、およびそこで展開される「ビジネス領域」に軸足が置かれる傾向にあるといえるでしょう。
一方、VRという語が用いられる際には、リアリティのある仮想世界を構築するための「技術」に焦点が当てられるケースが多く見られます。仮想世界を楽しむためのヘッドセットをはじめ、しばしば「現実とは異なる世界を構築し、そこへと没入するための技術」を表します。
以上をごく簡略化すれば、メタバースという「環境」を構築するために、VRという「技術」が用いられる構図になるでしょう。メタバースはその語源である「universe(宇宙)」が示すように、人々が活動するための新たなフィールドや、そこで切り拓かれる多様な可能性への期待感を多分に含む言葉なのです。
メタバースとブロックチェーンの関係
VR技術のほか、仮想通貨に用いられる「ブロックチェーン」の技術も、メタバースと深い関係にあります。端的に関係性を表現するなら、「メタバースという環境を拡張し、システム内の完成度を高めるうえで、ブロックチェーンの技術が大いに役立つ」という構図になるでしょう。
ブロックチェーンの技術は、いわばデジタルデータに「鑑定書」や「取引記録」を付与する技術です。改ざんの困難な鑑定書によって、これまで複製可能だったデータは「唯一無二の資産」という性質を帯びます。つまり、ブロックチェーン上で扱われるデータにも、芸術作品やトレーディングカードのような「価値」が生じ、「経済的な取引の対象」としての側面が生まれるのです。
ここから、たとえばブロックチェーン上で仮想通貨を用いてゲーム内のアイテムを取引する形態も多く見られるようになりました。アートをはじめコレクション要素の強い領域でも、ブロックチェーン上の市場で活発な取引が行われています。
このように、ブロックチェーンを通じて「さまざまな取引の可能性」がひらかれたことにより、メタバースに対する期待も一段と高められています。つまり、これまで「趣味としての仮想世界」であったメタバースは、「それ自体で生計を立てうる世界」あるいは「無数のビジネスチャンスに満ちた世界」として注目されはじめているのです。
メタバースの主なやり方
これまで馴染みのなかった「メタバース」という言葉に、どこか縁遠いイメージを抱いている人は少なくないでしょう。しかし、メタバースに含まれるサービスのなかには、スマートフォンアプリや携帯用ゲームを通じ、手軽に楽しめるものも少なくありません。たとえばNintendo Switchの「あつまれ どうぶつの森」など、メタバースであることを意識されずに享受されているコンテンツも見られます。
その他、一般のネット利用者にとっては、オンライン上に展開される「3Dのショッピング空間」などもメタバースに触れる機会となるでしょう。このように、特段「メタバースを始めよう」と意図せずとも、利用できるコンテンツは今後も増えていくと考えられます。 ここから一歩踏み込み、仮想世界への没入体験を深めるには、VR専用機器を購入することが選択肢になります。たとえばMeta社のVRヘッドセット「Meta Quest 2」は、多様なアプリやゲームをリアリティの高い仮想世界で楽しめるデバイスです。
さらに、仮想世界において経済的な取引を行いたい場合には、後述のように仮想通貨専用の口座やウォレットを開設する必要があります。ブロックチェーン上で鑑定書を付与されたデジタルデータは「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」と呼ばれますが、このNFTの取引は仮想通貨を通して行われます。つまり、ゲーム内でNFTアイテムを売買したり、マーケットプレイスでデジタル資産を取引したりするには、まず仮想通貨取引のための準備が必要なのです。
すでにメタバース関連のゲームなどでは、NFTの取引を通じて収益化を図る一般ユーザーも見られ、今後も経済取引を含む自由で多様性に富んだ環境が開拓されていくと期待されます。
なお、メタバースとNFTの関連性や、これらを含む新たなネット環境としての「Web3.0(ウェブスリー)」の概要については、以下の記事でも解説しております。あわせてご参照ください。
メタバースの代表的なアプリやサービス
メタバースと聞くと「特別な準備が必要」と思われがちですが、その世界を体験するうえでは、必ずしも「VR専用機器」や「仮想通貨の取引」が必要になるわけではありません。以下では、特別な用意をせずにメタバースの環境に触れられるアプリやサービスを紹介していきます。
cluster(クラスター)
「cluster」は、アバターを通じて仮想世界での活動や交流を楽しめるメタバースの典型的なプラットフォームであり、スマートフォンやVRゴーグルのアプリを通じて手軽に楽しめるサービスです。
clusterはすでに多くのユーザーを獲得しており、ビジネスや公共事業のシーンでも注目されています。たとえば自治体と連携して構築された「バーチャル渋谷」は、現実の渋谷エリアを再現した空間であり、仮想世界におけるイベントや交流の場として活発に利用されています。
clusterにおいて、ユーザーは「ワールド」と呼ばれる仮想世界を任意に選び、そのなかで他のプレイヤーとの交流を楽しんだり、ミニゲームに興じたりといった行動が可能です。さらに、自身で「ワールド」を自由に構築し、他のプレイヤーに公開することもできます。
それぞれのワールドのなかでは、ライブやイベント、展示会など、企業や個人による催し物も展開されており、メタバースの多様な楽しみ方を手軽に体験できる空間が展開されています。今後はバーチャル経済圏の確立に向けたアップデートも予定され、仮想世界のさらなる拡張が進められていく見込みです。
Zepeto(ゼペット)
「Zepeto」は韓国発の「3Dアバターソーシャルアプリ」であり、ファッショナブルに着飾ったアバターを通じてユーザー間で交流するためのプラットフォームです。写真から自動で生成されるアバターをベースに、髪型や服装を自由にカスタマイズしたり、現実の背景と合成しながら画像やムービーを作成したりすることができます。 バーチャルな世界で「画像の加工と共有」を通じたコミュニケーションを楽しめるアプリですが、豊富なSNS連携機能も魅力のひとつです。作成した画像をLINEのスタンプとして利用したり、Instagramと連携して投稿したりすることも可能であり、若い世代を中心に人気を集めています。
メタパ
「メタパ」は、凸版印刷が運営するオンラインのショッピングモールです。ユーザーは自身のアバターを使い、さまざまなバーチャル店舗を訪れることができます。商品を手に取る際は、AR機能によってサイズ感などを確認することも可能であり、メタバースにおけるショッピング体験を向上させるプラットフォームとして期待されています。
ユーザー間の会話やチャット機能も用意され、離れた場所にいる家族や友人などと一緒にショッピングを楽しめることも大きな特徴です。
ユーザー側の体験価値向上はもちろんですが、モール上に出店する企業にとっても、アバターロボットによって接客を効率化したり、直接店員と顧客とのビデオ通話を行ったりと、バーチャルならではのメリットがもたらされます。ユーザーのアクセス状況など行動分析にも対応しており、新たな商機を切り拓くメタバースの可能性が垣間見えるサービスだといえるでしょう。
仮想通貨取引をともなうメタバースの始め方
メタバースの将来性が注目されているのは、ブロックチェーンを通じて「仮想世界における経済取引が可能になる」という面が大きいといえます。ここから考えると、今後の発展が見込まれるメタバースのメリットを存分に享受するには、「ブロックチェーン技術によって構築される、仮想通貨を軸にした経済圏」に馴染んでおくことが望ましいでしょう。
以下では、仮想通貨取引をともなうメタバースの始め方について解説していきます。
仮想通貨取引所で口座を開設
ゲームやマーケットプレイスなどでNFTのアイテムなどを取引するには、まず「仮想通貨取引所」への登録が必要になります。取引所は国内外に数多くありますが、日本円をベースにした取引の利便性を考えると、やはり国内取引所への登録が望ましいでしょう。
国内の大手取引所としては、CoincheckやbitFlyer、DMM Bitcoinなどが挙げられ、基本的には連絡先などの情報登録と、本人確認の手続きを済ませれば、時間をかけずに口座を開設できます。
利用する取引所を選ぶ際には、必ず「利用したいサービスで用いられている通貨への対応状況」を確認しておきましょう。取引所によって取り扱う銘柄は異なり、マイナーな通貨が用いられている場合には、海外取引所を利用しなければならないケースもあります。
なお、海外取引所のうちには日本の金融庁の認可を受けていないものもあるため、利用にあたっては金融庁のホームページで認可済みの事業者を確認しておきましょう。
仮想通貨ウォレットの用意
仮想通貨を用いた決済には、取引所の口座に加えて、通貨を保管するための「仮想通貨ウォレット」が必要です。
NFT取引を目的とする場合、MetaMask(メタマスク)というウォレットが多く用いられています。ブラウザやスマートフォンアプリ上で手軽に操作でき、イーサリアム基盤のさまざまなプラットフォームに対応しているため、汎用性が高いことが特徴です。
MetaMaskの利用にあたっては、個人情報の登録や本人確認といった手続きは必要なく、アプリやブラウザの拡張機能をダウンロードし、認証用のパスワードを発行すれば、基本的な設定が完了します。
仮想通貨取引所の口座からウォレットに送金
口座とウォレットが用意できたら、実際に取引に用いる通貨を購入し、ウォレットに移しておきましょう。
まずは取引所で対象となる仮想通貨の購入手続きを行います。そのうえで、口座からウォレットへの送金手続きを行いますが、たとえばMetaMaskへの送金であれば「ウォレットのアドレスをコピーし、取引所の送金画面に貼り付ける」という簡単な操作で手続きを終えることができます。その後、ウォレット上で入金が確認できれば準備完了です。
利用したいサービスへの登録
ウォレットを利用できる状態になったら、実際に目的のサービスの利用を開始します。登録の際、ウォレットをシステムに接続し、システム内の取引にウォレット内の仮想通貨を適用できるようにしておきましょう。
仮想通貨取引を行う際の注意点
ブロックチェーンの技術を通じ、メタバースは今後もさまざまな方面に発展していくと考えられ、とりわけ一般の個人においても「稼ぐチャンス」が増えていくことが予想されます。
とはいえ仮想通貨一般に見られる価値の変動のしやすさや、発展段階のプラットフォームにおける情報収集の難しさなど、資産運用にまつわるリスクをしっかりと念頭に置くことが求められるでしょう。
さらに、仮想通貨にかかる税金についても注意が必要です。「仮想通貨の保有」は課税対象とはなりませんが、ゲームなどで仮想通貨により取引を行い、一定以上の収入を得た場合には、課税対象として確定申告が必要になります
メタバースを安全に楽しむためには、仮想通貨に関する国内の法制面についても意識を向けながら、自身の資産を守るための情報を得ていくことが求められるでしょう。
なお、仮想通貨取引の概要や、取引における注意点については、こちらの記事でも詳しく解説しております。あわせてご参照ください。
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