セールスイネーブルメントとは?ツールや事例も交えて解説
セールスイネーブルメントについて、言葉だけは見聞きしたことがあるけれども、実はよく分かっていない方は少なくないように思われます。
セールスイネーブルメントは、2010年代、アメリカに端を発し提唱され、浸透するようになった(主に)営業組織に対する取り組みです。
本記事では、そうした基本概要から注目される理由、導入するメリット、おすすめのツール、企業の成功事例まで、セールスイネーブルメントについて幅広く解説します。
目次
セールスイネーブルメントとは?
繰り返しますが、セールスイネーブルメントとは、営業強化・改善を目的としたアクションです。セールス(Sales)は営業、イネーブルメント(enablement)は有効化や組織割賦を意味します。
ほとんどの企業では、営業活動の成果は担当者の能力に依存する傾向にあり、再現性の高いノウハウの確立が生まれにくい状況です。
たとえ定期的に研修を行ったとしても、その因果や相関を可視化できずに苦労している組織はごまんといます。
そうした課題の解決策として注目を集めているのが、セールスイネーブルメントです。
セールスイネーブルメントの主な内容
たとえば、組織全体のパフォーマンスをクリアにしようと、成績トップの営業担当者の行動パターンを分析し、それを皆で共有していくやり方があります。このように“営業の本質”を探求するのがセールスイネーブルメントの特徴です。
単に上司から部下へ指導が入るのではなく、あくまで全体最適を睨んで取り組みます。個々の営業担当者の能力を平準化・底上げを目指すべく、パフォーマンスデータなど細かく採取し、検証の末、無駄なく実行していくことがポイントです。
マーケティング要素が色濃いセールスイネーブルメント
SFAやCRM、MAといったマーケティングシステムやツールを連携させることもセールスイネーブルメントならではの取り組みです。SFA(Sales Force Automation)は営業活動におけるさまざまなプロセスを自動化してくれます。CRM(Customer Relationship Management)を使えば顧客情報管理がスムーズです。MA(Marketing Automation)もまた業務を自動化してくれます。「新規顧客開拓のための流入経路の確保」「顧客情報の管理」「コンテンツ配信」「セミナーやイベントの補助」「施策の効果分析」など煩雑に入り組んだミッションさえ膨大なリソースをかけずに済むため、非常に効率的です。
これらを営業部門で統括しようと試みるセールスイネーブルメントは、それだけで価値の高さがうかがえます。
セールスイネーブルメントが注目される理由
後述するメリットとも重なりますが、セールスイネーブルメントが注目される理由を知ることで、少なからず導入の必要性が感じられるかもしれません。
主に以下のとおりです。
雇用の流動化
セールスイネーブルメントが注目を集めるようになった背景として、とりわけ雇用の流動化が挙げられます。営業力が属人化している場合、成績優秀な営業担当者が退社してしまうことは、会社にとって大きなリスクです。
実際、当たり前のように転職文化が根付いている欧米の企業に端を発し、セールスイネーブルメントは広まりました。そしていまや日本においても、この雇用の流動化は活発になってきています。国際競争力の維持や外資系企業への対抗といった観点からも、属人化された営業力に依存してしまうのは回避したい状況でしょう。そのため、セールスイネーブルメントが注目されるのは必然の流れだといえます。
マーケティングの最大化
昨今は、施策のバリエーションやツールの普及によっていわゆるマーケティングで獲得できるリード(見込み客)の質と量が向上している傾向にあります。だからこそ獲得したリードを確実に受注へとつなげる営業力が企業にとっては重要です。いわばマーケティングの最大化は、つまるところ営業組織全体の能力向上に委ねられます。こうした潮流は、企業がセールスイネーブルメントに関心を寄せる大きな一因になっているはずです。
セールスイネーブルメントがもたらすメリット
注目される理由に続いては、セールスイネーブルメントがもたらすメリットについて取り上げます。
総合力や生産性の向上が期待できる
第一に挙げられるのは、目的のとおり営業組織全体でスキルアップが図れる点です。セールスイネーブルメントによってノウハウが体系化されれば、それに沿って個々が容易に学習できます。一人ひとりがナレッジを積み上げた結果、集約される総合力は飛躍的に高まる期待が持てます。
また、マニュアルが統一されることで、資料作成にも手間がかからず商談に専念できる環境も生まれやすくなるでしょう。工数も削減でき、生産性向上が見込めます。
漠然とした営業スキルや貢献度を可視化できる
セールスイネーブルメントを導入すれば、営業担当者の業績に対する貢献度や受注にいたるまでのアプローチ方法などが数値化され、定量的な分析が可能になります。マネジメントする側にとってそう悩まずにジャッジできる利点もさることながら、何より納得感のある適切な評価は、メンバーのモチベーションアップにつながる大きな要素です。
顧客のニーズを把握できる
かつては、顧客のニーズを把握するためにマーケティング部門と営業部門が綿密に連携する必要がありましたが、セールスイネーブルメントが浸透していくなかで、その一連の仕事は一人の担当者レベルで行えるように進化しています。
これによって他部署を介する無駄なやり取りを減らすことが可能です。いちいち確認せずに済むのは顧客目線からみても頼もしい限りでしょう。まさしく営業力の強化が手繰り寄せた厚い信頼が、そこには垣間見えます。
おすすめしたいセールスイネーブルメントツール
以下、セールスイネーブルメントを導入するにあたって、おすすめのツールを紹介します。
Sales Doc
株式会社Innovation & Co.が提供している「Sales Doc」では、顧客に送付した営業資料の閲覧状況を把握できます。見込み客の検討状況が可視化されるため、営業担当者は最適なタイミングでアプローチ可能です。また、資料の一元管理や新人向けの研修動画の設定を手っ取り早くクラウド上で行える点も営業活動の効率化を促進してくれます。
PITCHER
「PITCHER」は18業種・58言語に対応する世界中の企業で導入実績のあるツールです。Salesforceとシームレスに統合されており、営業担当者は資料や動画など組織内のすべてのリソースをクラウド上の自身のブリーフケースに入れて持ち運ぶことができます。社内はもちろんのこと、社外でも自身のスマホなどから閲覧できるのが嬉しいポイントです。また、各機能はオフラインでも使えます。プレゼンテーション、マーケティングorトレーニングコンテンツの管理や分析などその幅広さも魅力的です。
Smartsheet
「Smartsheet」はフォーチュン誌が選ぶ100社のうち実に9割が利用している人気のツールです。
他と比較すると、ドキュメント系のコンテンツが充実している点が特徴に挙げられます。複数人で共同ドキュメントの編集が行えたり、プロジェクト管理、生産管理で用いられるガントチャートの作成・共有ができたりと、組織内で使うにはうってつけです。
Senses
株式会社マツリカが提供する「Senses」は、社内の顧客情報をまとめて管理できるだけでなく、AIが登録した顧客企業のニュースリリースや株価情報を自動的に取得し、リスク分析などを行ってくれます。また、営業担当者の顧客に対する施策アプローチが時系列で記録される機能が搭載されている点も特徴的です。
セールスイネーブルメントの成功事例
セールスイネーブルメントを導入した結果、営業組織が活性化された例は実際のところ少なくありません。以下、成功事例をいくつか紹介します。
東芝テック株式会社の場合
東芝テック株式会社ではオンラインでの営業方法とスキルの属人化によるバラつきが課題だったといいます。そこでセールスイネーブルメントツールを導入。主にオンライン営業に使用する動画コンテンツの作成、提案資料の標準化・共用化を行ったところ、如実に結果に寄与します。具体的には視聴者が動画内で資料をダウンロードできるように変えたところ、取り扱い製品のひとつである真空包装機の売上が以前の3倍にアップ。(資料作成の)作業時間の削減もあり、飛躍的に生産性が向上することになります。
NTTコミュニケーションズ
NTTコミュニケーションズでは、典型的な営業活動の属人化問題に悩まされていたなか、セールスイネーブルメントの専門部署を立ち上げます。そこでは、組織内のさまざまなデータがかき集められ、勝ちパターンを醸造していきます。そして、それらを共有し営業担当者一人ひとりが模倣していくスタイルが確立。組織に営業ノウハウの再現性が植え付けられます。
なお、皆が率先して参加したくなるラーニングカルチャーが確立されたこと自体、企業にとっては大きなプラスだったようです。社員の士気とあわせて個々のスキルが高まる相乗効果は、セールスイネーブルメントの恩恵そのものといえるでしょう。
Sansan株式会社
Sansan株式会社では、2018年に社内でセールスイネーブルメントの部署を立ち上げました。多くのセールスイネーブルメントの先行事例が人材開発に重きを置いているのに対し、ここでは採用や案件マネジメント、教育、評価制度などに適用。結果、採用力は以前の約3倍に伸びます。また、案件を顧客の購買プロセスで管理したこともセールスイネーブルメントを機に生まれたアイデアです。これによって新人でも自分の役割を明確に意識でき、早い段階から戦力化してくれるのだといいます。
SATORI株式会社
SATORI株式会社は2016年に設立されたマーケティングオートメーション(MA)ツールの開発・販売を行う会社です。
セールスイネーブルメントによって行われる具体的な取り組みとしては、営業履歴の分析やインサイドセールスが獲得した顧客の分類、スキルに合わせた営業担当者へのアサイン……等々が挙げられます。どれも機会損失を軽減するために必要なプロセスです。
セールスイネーブルメントをうまく活用しよう!
雇用の流動化やオンライン営業の活発化などにより、多くの企業で組織全体の底上げが求められています。そうした課題に対して、セールスイネーブルメントの導入は解決あるいは改善の糸口の一つになり得るでしょう。
分析や検証にもとづき皆が再現できる手法を編み出していくことはそう容易ではありません。状況によっては何度も見直す必要が出てくるはずです。
一方で、そうやって最適解へと向かっていく過程こそ、まさにセールスイネーブルメントの本懐だといえます。営業の強い組織にするには、試行錯誤は必至。ぜひ、もがいた先に光を見出してください。
RECOMMENDED おすすめの記事
-
2024/04/01
【月間総合ランキング】2024年3月のランキング!~業種別記事編~
企業経営事業戦略
-
2023/09/22
Instagram(インスタグラム)をWeb版で利用するためのログイン手順を解説! ブラウザでアクセスするメリット・デメリットとは?
SNSInstagram
-
2024/01/04
Instagram(インスタグラム)のノートとは?見れない原因や音楽の設定方法などの使い方を解説
SNSInstagram
-
2024/04/04
“ジュノンボーイ”出身 長尾慶人氏が目指すIPテックNo.1企業—Wunderbar
企業経営市場動向
- スタートアップ・ベンチャー
- 会社代表
- インタビュー
RANKING ランキング
- WEEKLY
- MONTHLY
UPDATE 更新情報
- ALL
- ARTICLE
- MOVIE
- FEATURE
- DOCUMENT